むかつき合える仲間にまで発展

 私たちが得たものは、学びを掴みに行く姿勢や自分の特権への気づきだけではありませんでした。(前編) お互いに「むかつき合える」仲間もできたのです。

 高校までも一つの目的に向かって仲間で活動することはありましたが、心のどこかで「自分の意見を受け入れてもらえなかったらどうしよう、めんどくさいと思われたら嫌だな」と不安でした。プログラム開始後も相手の負担になるから、という言い訳のもと自分の思いを伝えることなく、その場から逃げていました。そのように私も含め、メンバー全員がチームとしての在り方について悩んでいた時に、担当教員の和栗先生から立教大学の中原淳教授の記事を紹介してもらいました。記事を読み、ただ仲良くするだけではない、本音をぶつけ合うことでより考えを研ぐことができ、より良いものを創り上げることができる、と気づいたのです。

 記事を読んでいきなり行動を変えることはできませんでした。それでも、チームとしての行動目標として掲げていた「愛ある居場所づくり」をお互いにリマインドしながらオンライン交流に向けた準備を重ねました。企画をより良いものにするために、本音を伝え、時にはむかつき合ったのです。言いたくないことも言わなければならないため、本音で話すのは疲れます。嫌われるリスクを負わないよう、当たり障りなく過ごす方が楽です。ですが、私たちはそういった面倒や恐れから逃げなくなっていました。自分のことも他者のこともあきらめたくない、かつより良いものを創り上げたいという想いを各メンバーが発揮するようになっていたからです。その想いから生まれた言動は、企画の質を高めただけでなく、お互いへの理解や信頼をも深めました。自分の想いを逃げずに出すことを続け、素直に向き合える仲間になれたことに気づけた瞬間の、心が満たされていった感覚は私にとって得難いものだったのです。

むかつき合い、本音で向き合ったからこそ生まれる笑顔

「自分の軸」を問い始める

 この一年間で一番の学びのひとつと言っても過言ではないのが、「自分の軸」を持つことの大切さです。それに気づけたのは、プログラムを通して自分の軸を持った多くの「カッコいい大人」に出逢えたおかげでした。“Am I being useful?” と自分に問い続けるヴェヌーリさん(※1)。 “Once in a lifetime.”と挑戦し続ける薄井さん(※2)。出逢った全ての方々が全ての行動に自分の意志をもって、「自分がどうしたいか、どうありたいか」と常に問い続けていました。その姿から、他人に流されやすく、失敗しても笑ってごまかすことが多い私自身の「軸」とは何か、を考えるようになったのです。

 それなりに課題を出して、それなりに良い成績をもらうというようにそれなりに過ごすことは得意です。ですが、それではやって終わりで次に生かすことができない、何も自分のためにならないことに気づきました。周りに流されるのではなく、「私」という一人の人間の意志や価値を表しながら行動し、自分の進む道を自分で切り拓いていきたいと思うようになりました。

プログラムの報告会(4月6日実施)で使用したスライド プログラムを通して出逢った「カッコいい大人」たち (上段左から寺原桃子さん、バンドゥラ・セナディーラさん、新谷舞子さん、薄井寛さん/下段左から田中裕介さん、ベヌーリ・ペレラさん、カピラ・ラスナイカさん、和栗百恵先生)

(※1) ヴェヌーリ・ペレラさん
スリランカ人のパフォーマンスアーティスト。自身のパフォーマンスを通して、既存の社会や権力にただ同調するだけの人たちに、疑問を持つよう促すことを軸に活動を続けている。
ASIA centerでのヴェヌーリさんの記事 

(※2)薄井寛さん
中央大学在学中に和栗先生のもとでスマトラ島沖地震後のスリランカで学んだ経験を持ち、その後外務省職員としてパリ政治大修士課程修了後、ベナン領事館設立業務、モントリオール領事館、本省での安全保障、総務業務を経て、北陸で工芸を通じた地域振興に携わるためIターン転職をしている。
ゲストセッション時に勤務していたNoeticaホームページ 

What’s next?

 自分の「軸」を持ちたいと思い始めて、物事に取り組む姿勢が変わりました。ついつい「やらなきゃ」と思い込んでしまう私ですが、そこでまず一歩止まって「『やらなきゃ』は自分のありたい姿か」と自分を俯瞰して、自分に問えるようになりました。また、人の意見にすぐ同調するのではなく、「私はどう思うのか」と自分から自分の考えを大切にするように心がけ、日々意識的に繰り返し積み重ねています。そうすることで、自然と「やらなきゃ」ではなく、「やりたい」「私はこうしたい」と自分ごとにして楽しみながら物事に取り組めています。そして、「やらなきゃ」が「やりたい」「私はこうしたい」になることにワクワクしています。「やらなきゃ」よりもずっと楽しく、アイディアも次々に生まれるのです。

 このスリランカプログラムで過ごした1年間は本当に濃い時間でした。前編 で綴った「特権」、むかつき合えるようになった仲間、少しずつだけれども創り出せている自分の「軸」。高校までの授業ではいかに「受け身」だったかを自分から学び問うことによって痛感しました。何事も「やりたい」と臨むことで生まれる楽しさの実感、本音でぶつかり、むかつき、励まし、向き合い続けた仲間とのかけがえのない時間。まさに学問の青春、だったのです。

 スリランカプログラムが終わった今、学生委員やJD-Matesといった様々な場に飛び込み、学びを生かそう、さらに掴もうと奮闘しています。学問の青春はまだまだ続きそうです。

国際教養学科2年 坂口綾音

最近のお気に入りの言葉:
余裕のある大人はかっこいい でも余裕のない人生は燃える ― あいみょん「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」
最近ワクワクすること:
・JD-Matesとしての留学生のサポート、広報活動
・学生委員としての企画づくり
・自分の考えをまとめた自分ノートづくり
・毎日の服選び
コメント:
学びを自分の言葉で語れるよう、かつ次に生かすことができるよう自分の考えをノートにまとめることにはまっています!
(福岡県 福岡県立嘉穂高等学校)
(2022年度執筆)

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