「過程」を見つめ、広がる世界

「狩猟」プログラムと田植え体験

 2021年6月20日、福岡県糸島市にあるいとしまシェアハウスにて、2021年度狩猟プログラムの一環として田植え体験が行われました。狩猟プログラムは、「”狩猟”からみつめなおす暮らしと仕事」というテーマのもと、狩猟に関する本を読み、さらに学外のゲストの方々とのお話を通じて、自身や社会へと目を向け、考えを深める、福女大ならではの体験学習プログラム(正規の授業)です。履修生は、いとしまシェアハウスの方々に受け入れていただき、6月と10月(もしくは11月)に田植えや稲刈りの体験を行います。

「過程」に目を向ける

 「食べ物・お金・エネルギーを自分たちでつくる」をコンセプトにしたいとしまシェアハウスへの訪問で、畠山千春さん・浩一さんご夫妻に出会い、お話を聴いて、さらに、実際に田植え体験を行ったことで感じたことは、「『過程』を知らない」ということでした。生活を一から自分たちの手で作り上げようとするいとしまシェアハウスの皆さんの暮らしと自身の暮らしとの違いを感じ、田植えという普段は行わない作業を行うことで、いかに自分が全体の一部分しか見ていないかということに気付きました。

 スーパーに行けば簡単に安価で手に入る肉や魚、野菜、米などの食材は一体誰がどうやって作り、どれほどの手間がかかっているのか。当たり前の日常の裏側に自分の知らない「過程」があって、あまりにも早く過ぎていく日々の中で、その「過程」を考えることなく生きているのです。私は、自分が精一杯働き、お金を得ることで自身の暮らしを作り上げていくのだと考えていましたが、それはモノが市場に出回っているという前提があってこその考えでした。普段食べている米でさえ、作り上げるのに農家の方がどれほどの労力と時間をかけているのか、目を向けることもありませんでした。

 もちろんそれは、市場にあふれるモノに限った話ではありません。今回の訪問は、新型コロナウイルスの影響によって実施できるかどうかが問題になりましたが、無事に実施することができました。これは、検討に関わってくださった大学の教職員の方を含め、全ての方々の協力があってこその実施だったのです。この「過程」についても、私たち学生は考えることがあまりなく、当たり前だと思って過ごしてしまっている気がします。当たり前に、サービスのように周囲の人が自分のために時間を使ってくれていることに対して、それがあって当然のように感じてしまいます。今まで気付くことのなかった「過程」が、見えないところで他にもたくさんありました。

社会との関わりと自分の在り方

 「過程」を意識するようになったことで自身と社会との関わり方について考えることができるようになり、少しだけ世界が広く見えるようになりました。自分だけの暮らしや仕事だと考えていたものは、実際にはそうではなく、多くの人との関わりがあって成り立つものだということに気付き、また、自分を見つめ直すきっかけにもなっています。

 私は6月の訪問後、学内で行われる活動の1つである寮活動の裏側を想像したりだとか、オープンキャンパスにスタッフとして参加し、知らなかったところで周囲の人がどのように動いているのかを見たりして、誰かが行わなければならない裏側の仕事へと意識を向けるようになりました。9月以降にも、今回お会いした畠山千春さん・浩一さんご夫妻をはじめとする猟師の方々にお話を聴く機会があるので、自分の暮らしを成り立たせる自分以外の人や動物への向き合い方を学び、実際に自分が仕事をして「過程」を作り出すようになったときに、誇りをもって価値があると思える「過程」を作り出せるように考えていきます。

食・健康学科 萬谷晴佳

名古屋市立菊里高校出身
管理栄養士の資格をとるための勉強以外にも多くのことが学べるのではないかと進学先として選んだ福女大で、やってみたいと思ったことにとにかく飛び込むように意識しています。私が挑戦中の狩猟プログラムをはじめ、福女大には成長の可能性が様々なところにあります。まずは自ら飛び込んで、成長につながるチャンスを一緒に掴みませんか。

(※2021年執筆)

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