学び、問う

「何かに挑戦したい」
 そんな漠然とした想いとともに私たち6人は体験学習「スリランカExploring ”Development”プログラム2021」の門戸を叩きました。

 約10ヵ月の事前学習、3週間のスリランカとのオンライン交流、そして1か月かけて準備した報告会。「自分で動く、やってみる」、そして、やってみたからこその失敗。これほどまでに「できない自分」に向き合い、「諦めない自分」に出逢った経験はありませんでした。そしてそれは5人の仲間がいたからこそできたことでした。夜通し語り、励まし合い、本気でぶつかりながら、「学ぶ」を「青春」と思える私に出逢えたのです。「何かに挑戦したい」という漠然としていた想いが、「学問の青春」と呼べるものになっていたのです。

 学問、すなわち学び問う、ということは自分の弱さや今まで知らなかった世界の現実と向き合い、「私は私としてどう生きていきたいのか」を問い続けるものです。高校までの「勉強」とは違って人生が変わったと実感できるほど、かけがえのない眩いものでした。

 周りの友達は「大変そうだね」「きつそうなのになんで頑張るの?」と気遣いの声をかけてくれました。確かに楽しさばかりではありませんでした。でも、なぜ私たちがあれほどまでに熱中していたのか、その答えのほんの一部分を紹介します。

プログラムの集大成である報告会(4月6日実施)のチラシ

学びを掴みに行く

 高校までの「学び」というのは、目標も課題も全て先生が掲示し、それをこなすというのが普通でした。そのときに「なんでこれをやるのか」なんて思ったこともありませんでした。しかし、プログラムでは「自分が何を学びたいのか」をもとに事前学習を行いました。文献購読、ゲストセッション、オンライン交流に向けた準備の中で、誰かにさせられる学び方、担当教員の和栗先生のお言葉を借りるならば「have to」な学び方ではなく、自分が知りたい、やりたいから生まれる「want to」な学び方を知りました。

 このwant toな学び方を、私たちは「学びを掴みに行く」と呼んでいます。学びを掴みに行くという意識をすることで、授業だけではなく普段の生活の中でも「今起きていることから何を学べるだろう」と問えるようになります。そんなふうに自分のアンテナを張り巡らせると、どんなに失敗してもそこから最大限の学びを掴むことができます。私は学びを掴みに行こうとする自分を素敵だなと思うことができました。「私がやりたいからやっているんだ」と言えることに喜びを感じられるからです。

事前学習での学びの軌跡

私にある「特権」を知る

 渡航が叶わない中での3週間にわたるスリランカとのオンライン交流は形容しがたいほどに刺激的で自分の根本から揺さぶられる感覚を何度も味わい、涙を流しました。この交流の中で何よりも考えたのは、意外にも自分のことでした。そのきっかけとなったのが「特権」という言葉です。

 パフォーマンスアーティストであるヴェヌーリさん(※)は「私には民族や生まれた環境によって持つことができた『特権』があります。そしてその『特権』がない人がいることも理解しています」と語ってくれました。

 「特権」という概念は、「なぜ大学に行けるのか」を考えさせてくれました。そもそも「なぜ大学に行くのか」を問うこともなく入学し、眠いと言いながら授業を受け、休日にはバイトをしたり、友達とご飯に行ったりできます。私にとって当たり前なことが、生まれた時代、環境によっては、当たり前ではない。よく耳にする言葉ですが、実際にそれらができていない人々と出逢い、自分ごととして初めて自覚しました。当たり前なことは「するもの」ではなく「できるもの」だったと気づきました。

 学ぶことが「できる」という「特権」を私は無駄にしていたのかもしれないと、自分を恥じました。その恥ずかしさが「学びを掴みに行く」姿勢をさらに前のめりにさせました。(後編に続く)

スリランカとのオンライン交流にむけた怒涛の準備の一部

(※)ヴェヌーリ・ペレーラさん
 スリランカ人のパフォーマンスアーティスト。自身のパフォーマンスを通して、既存の社会や権力にただ同調するだけの人たちに、疑問を持つよう促すことを軸に活動を続けている。
ASIA centerでのヴェヌーリさんの記事


 オンラインプログラムで交流するスリランカの人たちに向け、私たちや福岡を紹介する動画を5本制作し、YouTube上で共有しました。そこに、4月に学内で開催した報告会の予告動画も加えてあります。
制作プロセスは、「誰が、いつ、どうやって、どんな気持ちで観るのか」と共に、情報の正確さ、バランス等を徹底的に考える機会となりました。修正に次ぐ修正を粘りに粘って重ね、完成させました。是非ご覧ください!
▶YouTube再生リスト:スリランカExploring "Development"プログラム2021
 

国際教養学科2年 中野朱梨

最近のお気に入りの言葉:
I am the master of my fate. I am the captain of my soul.   
- William Ernest Henley
最近ワクワクすること:
・6月に開催した学生向けのリーダーシップミニレクチャー
・JD-Matesとして留学生をサポートしながら交流の輪を広げること
・バイト先でのリーダーシップの実践
・出逢った素敵な言葉をメモに書き留めること
・授業で得た知識を学外でどう使えるか考えること
コメント:
福女大にもっとリーダーシップを!学びを楽しむ仲間を!という気持ちを胸に、常に自分に問い考える姿勢を持ち続けたいです。
(福岡県 筑紫丘高等学校出身)
(2022年度執筆)
 

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