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お知らせ2025.03.08
グローバルリーダー演習履修生による、自らの成長を綴った活動報告をアップ!
3/8は、平和で安全な社会づくりの実現における女性の役割の拡大や、組織における女性の地位向上・男女共同参画のために力を尽くす女性たちをたたえる国際女性デー。国内外で様々な記念行事が行われるのに足並みを合わせ、2024年度グローバルリーダー演習履修生からの年度末活動報告Part 1をお届けします。
執筆は、上村明空さん(国際教養学科2年)、梅木乃々佳さん(国際教養学科3年、アイスランド留学中)、大亀彩花さん(国際教養学科2年)、福田優月さん(環境科学科3年、竹内ゼミ所属)、三宅佑奈さん(国際教養学科3年、クロアチア留学中)の5名によるチームワーク。
綴るという作業から、気づきを深め、さらなる学びを生み出したという活動報告をどうぞご覧ください!
【GL24】 学びは日々の小さな瞬間に~やらかしを肥やしに、まだまだまだまだ自分~Part 1

次代の女性リーダー育成を掲げる福女大創設100周年を記念して、2022年度に 副専攻「グローバルリーダー (GL) 」プログラムが新設されました。そのプラットフォームとなるのが「グローバルリーダー (GL) 演習」です。
GL演習では、共に「やってみる」「感じる」「考える」を何度も繰り返すプロセスを通して、自分の学びを言語化することを目標としています。座学で学んだ理論や概念と、教室の中だけでおさまらない実践を往還しながら、自己や他者、社会を知り、「自分はどうありたいか」「どんなグローバルリーダーになりたいか」を模索します。
学年も学科も、リーダーシップについての学習背景も違うメンバーが集まった2024年度GL演習 (GL24)。私たちは、和栗百恵先生と豊貞佳奈子先生のご指導のもと、自分はもっと成長できる=「まだまだまだまだ自分」を合言葉に、様々な試行と未成功・ちょっとした成功を通じて少しずつ、自分の「グローバルリーダー」についての考えを深めてきました。
私たちGL24がチームとして何に取り組み、どんなひとに出会い、何を学んできたのか。1年間の体験的な学習プロセスを経て、それぞれが「グローバルリーダー」「グローバルリーダーシップ」をどのように考えるのか。Part1・Part2の2回に分けてお届けします。今回のPart1では、授業内だけでなく、授業外の活動―何度もやらかした日々の小さな瞬間からも学びを得てきた、私たちの1年間の活動の「あゆみ」をどうぞご覧ください。
目次
1.1年間のあゆみ~その概略
2.各活動のダイジェスト
3.「グローバルリーダー」「グローバルリーダーシップ」についての学び (Part2・執筆中)
4.プロセスからの学び (Part2・執筆中)
5.まとめ (Part2・執筆中)
1.1年間のあゆみ~その概略

1年生2人、2年生2人、3年生3人の計7人の学生メンバーと、和栗先生・豊貞先生で始まった2024年度のGL演習。まずは、3回の座学で「リーダー」「リーダーシップ」「グローバルリーダー」に関する概念、モデルそして理論のインプットがあった。そこで1枚のスケッチをもとに学んだのが、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンソン教授による「恐れのない組織」。fearless(恐れのない)=「心理的安全性」がある状態ということ。
エドモンソン教授による概念を学ぶまで、「心理的安全性」とは仲のいい友達との「気をゆるしあう関係」や「安全にお互い傷つけあわないこと」だというイメージを持っていた私たち。エドモンソン教授の「心理的安全性」概念は、それとは異なるものだった。
エドモンソン教授の概念に注目が集まった背景には、新自由主義が拡大し、企業の不祥事が頻発する1990年代のアメリカ、という文脈があった。早い段階で不正にブレーキがかからない=「それっておかしくない」が言えない・共有されない=心理的安全性が低い、というもの。組織の学習やエンゲージメント、パフォーマンスにとって、「沈黙の文化」は危険であること、「仲良し」でいることや、基準を下げること、二者間の信頼ではなく、「組織の状態」を指すと学んだ。このスケッチにもある通り、恐れがない=心理的安全性がある=「率直(Candor)であることが許される状態」なのだ。
これはつまり、摩擦が生まれるかもしれないけれど、ミスしたことを率直に話したり、他の人とは異なる意見を言えたりする環境が心理的安全性がある状態ということ。心理的安全性があれば、失敗に凹むのではなく失敗から学び次に活かしたり、異なる意見を出すことで新しい視点を得てチームとしてよりよいものを作り上げることができたりする。そこで、私たちはお互いに、例えば「今は余裕がないから役割を引き受けられない」といった一見ネガティブなことも率直に話したり、「いいね」だけで肯定した風で終わらず思ったことを言ったりなど、本音のコミュニケーションを大事にしようと決めたのだった。
ゲストセッション準備プロセスで露呈する、FearlessならぬFearfulさ
座学でのインプットの後は、授業内「ゲストセッション」を私たち自身が企画運営する活動へと軸足を移した。福女大女性リーダーシップセンターが掲げる「ないものを描く」を実践する、つまり「普通」とは少し違った「おかしな」取組をしている社会人からお話を伺う機会を、私たち自身が企画運営する、という活動である。
意気込みだけは十分に始めたものの...これまで大学で受けてきた講義メインの授業とも、学生有志の活動とも異なる、自分たちで授業を部分的にデザインし、実行するというプロセス。そもそも指示待ち癖が抜けず主体的に動けていない割には、先生に相談もせず勝手にゲストに企画書を送ろうとしたり、ゲストや先生方、職員の方、そして参加してほしいターゲット層の状況を想像することなく配慮不足となり…結果、余計に手間と時間がかかる沼にはまるのだった。
また、本音のコミュニケーションをすると決めたものの、正直に「今は余裕がない」など「ネガティブ」な発言ができず(みんなも余裕ないかもしれないのに、自分だけそれを伝えたら嫌われるかもしれないと恐れていた)、「やる」と言って決めた期限にタスクが間に合わず…とにかくやらかしばかりな日々。
earless(恐れのない)組織にするとチームで掲げていたものの、いざ活動においては「遠慮」しているわけではないのに、率直に言えない自分たちがいた。自分の中にある「嫌われたくない」というFear(恐れ)が「摩擦」を避けていることに気づく。そもそも実際に言って嫌われたわけでもないのに、「嫌われる」と想像?妄想?して恐れていた。「今は余裕がない」という正直な自己開示と、その自己開示を受けた相互フォローこそが恐れをなくす、は、実際にやってみてわかったことだった。それは、やってみる、という、恐れがあることは認め、向き合い、恐れを超えようとしてできたことだった。
自分たちはもっとやれるはず
謳ったことが実行に移せない、移したくても恐い…そんなFearfulな自分たちの姿に気づいてそこで止まるのは嫌だった。「自分たちはもっとやれるはず。成長しているはず。」と信じ、様々なやらかしを肥やしにしながら、なんとか初めての企画を終えた(後述の宮ヶ迫さんイベント)。途中で学生メンバーが7人から5人になり、さらに夏休みからは5人中2人が交換留学でアイスランドとクロアチアへ。以前のように全員が直接会って話しあえず、日程調整や報連相に苦戦した。それでも時差と距離を超えてのオンラインでのやりとりを諦めず、徐々にコツをつかみだすと、お互いの特性や状況を活かして役割分担できるようになっていった。
ゲストセッション等イベントを企画運営するにあたっては、学生ミーティングや先生とのミーティングにも膨大な時間をかけて取り組んできた。授業だからではなく、もっと自分・他者・社会を知るために、自主的に学外のイベントにも参加し、学びの場を広げようとしてきた。「リーダー」「リーダーシップ」「グローバルリーダー」についてだけでなく、壁ややらかしもたくさんある「動きながら学ぶ」プロセスから、ひとと協働していくうえで大切なことも学んだ1年間になった。
2. 各活動のダイジェスト~「動きながら学ぶ」の軌跡

2024/6/19 ゲストセッション
千松信也さん(猟師・著述家=*「肩書=職業ではない」!)
【どんなひと?】
京都大学で10年間の在学時代「吉田寮」に居住。休学期間は当時独立運動のまっただ中にあった東ティモールで選挙監視団にも加わった。帰国後、狩猟を学び、寮で猟果をふるまう。著書「ぼくは猟師になった」やドキュメンタリーなどで著名になった現在も、学生時代以来のアルバイトを続けつつ、山での採集、海・川での釣り、猟期には基本的に家族・知り合い食用限定のわな猟、養鶏・養蜂を行っている。
【学び】
・自分が所属しているところに不満があるなら意見を言えばいいし、その場を変えればいい、そこで行動を起こすことが、自分が属する場所に責任を持つことになる。
・自己を知るには他者を知ること。自分と違う立場や背景の人を知れば知るほど、「じゃあ自分は?」と照らし合わせることができる。

宮ヶ迫ナンシー理沙さん(語学教師、翻訳・通訳者、ライター)
【どんなひと?】
ブラジルで生まれ、9歳の時に来日。小中高時代は懸命に日本文化に同化しようとし、大学になってから自分のルーツを意識し始めた。中央大学総合政策学部在学中、自分自身で開拓した海外インターンシップを単位にできるプログラムでブラジルに渡ったものの、学びを言語化できずに悔しい思いも。就職後、外国にルーツをもつ子どもに焦点をあてたドキュメンタリー映画「Roots of Many Colors」を制作。現在は、ブラジル移民両親との会話が不自由なこども向け母語教室のボランティア活動のほか翻訳・通訳者、ライター、長野県伊那市集落支援員(多文化共生推進)として幅広く活動。
【学び】
・社会でマイノリティ化されている人々の存在とその生きざま、同時に、マジョリティの特権について考え、「他者を知り自己を知る」ためのヒントを得た。
・より詳細な報告はこちらからどうぞ!

「野外活動を通じたリーダーシップ学習」のために、リーダーシップ開発科目である「リーダーシップ論」のメンバーとともに、福岡県糸島市で1泊2日の合宿に参加した。グローバルでローカルなキャリアをお持ちで 、野外教育団体Sense of Nature代表の森本弘太 (まりも) さんにご協力いただいた活動。
【学び】
・経験学習モデル (経験→内省→概念化→試行) (Kolb, 1984) をまりもさんがアレンジした、体験から感じたことを自身で振り返り、一般化 (感じたことを言語化) し、次の体験の準備として仮説 (こうしたらうまくいくだろう) を立てるという「体験→内省→一般化→仮説化」のサイクルで学んだ。
・全員が目隠しをした状態で一本のロープを正方形にしたり、ひとつの物語になるはずの複数枚の絵を言葉だけで伝えあい、順番を並び替える、などのミッションベースのアクティビティを通じ、自分や他者の行動がどのようにプロセスとしてのリーダーシップを生み出していたかを考え、シェアした。共通の目的を達成するために、他者と協働する中で、自分の行動をメタ認知し、意図的に行動していくことについて考えた。(これってGLそのもの!?)

外務省「日・カリブ交流年2024」認定事業「福岡からみるカリブ」企画が福大・久留米大の先生方や学生たちと予定されていることを知り、協働の機会からも学びたいと参画。会場は福女大のC201教室で、普段は大人数講義や講演会の会場になる場所。大学の教室では見たことがないような「おかしな」場にしたいと、張り切って臨んだ。
他大学の学生や先生方、そしてトリニダード・トバゴ人ゲストという布陣で臨む定員100名の大きなイベント企画運営…約1か月の準備期間からの最大の気づきは、対面で打ち合わせが難しいチームでは、お互いへのケアを意図し、見せる、そして想定外を想定・見通してスケジュールを組むことの重要性だった。
※当日までの準備の様子、「おかしな場」や学びの詳細は、こちらの記事からどうぞ!
「国際開発協力」をキーワードに据え、企業・市民社会 (NGO・NPO)・国際機関それぞれの立場で、国際社会を舞台に活躍されてきた3名をゲスト講師に迎える3連続企画。ゲストのキャリアや仕事・活動にかける思いと共に、「グローバルリーダー」や「グローバルリーダーシップ」についてのお考えを伺い、引き続き「自分はどうありたいか」を模索・試行しながら、「自分が『グローバルリーダー』としてどこでどのような行動ができるのか」について考える時間を作った。
3連続企画を通して、国際開発協力におけるアクター (国家・国際機関・市民社会・企業など、主体となって行動するひとや組織) が、問題解決のために、「組織の垣根を越えた協働」を実装することが重要であると学んだ。以下、各回を簡単に紹介する。

船津優さん~企業の観点から~ (不二製油ヨーロッパ・アフリカ統括会社サステイナビリティ開発チーム Sustainability Specialist)
【どんなひと?】
早稲田大学在学時に授業や準正課活動を通じ、NGO (市民社会組織) や国際機関での「国際協力」に興味が芽生える。卒業後、食品流通会社に就職するが早く海外・現地で活動したいという思いから退職、青年海外協力隊モザンビーク隊員に。タンザニアで農業機械レンタルをするベンチャーを経て、現在はアムステルダム拠点の上場企業でご活躍。
【学び】
・「アフリカの貧しい女性を対等なビジネスパートナーとして見る」ビジネスで国際開発支援を行う視点。各アクターに対する視野を広げることができた。
・現地語を習得してコミュニケーションを重ねたり、現地の人に必要な「援助」は何かを考えたうえで、投資家やNGOなど異なるアクターとも協力。なんとなく「日本の外」と認識していた「グローバル」な環境にも、現場を知り現場で動く意味でローカルの視点があることに気づき、地域に根ざした活動の重要性を感じた。

大橋正明さん~市民社会の観点から~ (恵泉女学園大学名誉教授・SDGs市民社会ネットワーク代表理事)
【どんなひと?】
学生運動を経て訪れたインドを忘れられず会社員を辞め、「誰一人取り残さず小さな声を掬い上げる」ために活動されてきた大橋さん。国際開発学、NGO・NPO論、南アジア地域を専門とする大学教員色を定年退職された現在も、市民社会の声を届けるため国連の未来サミットに参加したり、ロヒンギャ避難民支援調査活動をしたりと、国内外で活躍中。
【学び】
「好きこそものの上手なれ」。NGOの一員として現場を知り、そこで生きる人々を好きになり、共に活動を重ねられたからこその現場のリアルなお話。既存の制度からこぼれ落ちてしまいがちな問題や少数派の声を拾い上げ、政策提言や緊急援助・長期的な支援を行うことが、市民社会の重要な役割だと学んだ。

田中香苗さん~国際機関の観点から~ (UN Women / 国連女性機関アジア太平洋地域事務所プログラム・コーディネーター)
【どんなひと?】
学部生時代に自らインターンシップを開拓するプログラムを履修、オランダの旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所で、学部生としては極めて稀なリーガル・インターンとして活動。卒業後はNGO、外務省、JICAなど政府開発機関での勤務を経て、現在はジェンダー平等と女性のエンパワーメントを推進する国連機関 UN Womenのアジア太平洋地域事務所 (バンコク) でご活躍。女性・平和・安全保障 (Women, Peace and Security) やYouth Leadershipの分野に注力し、市民社会や学生と協力し活動されている。
【学び】
・NGO、外務省・財務省などの省庁、政府開発機関など各アクターが果たす役割の具体例。
・日本人・大学生も当事者になりうる、サイバー型人身取引事案に「国連職員」としてアプローチする限界。
・「することになっている」組織の活動を「こなす」だけではなく、時に「することになっている」を超えて「他組織とつながり活動を展開する」を意図・実現していく重要性。そうするには、業務分掌が違うとされていたり、前例がなかったり、手続きが猥雑だったり…といった壁に向かっていく意志やスキルが必要となる。

立命館アジア太平洋大学(APU)国際経営学部の准教授であり、インクルーシブ・リーダーシップ・センター (CIL) のセンター長でもある篠原欣貴先生とゼミ生(ベトナム、ナイジェリア、そしてバングラデシュの国際学生3名、うち2名は大学院生)との交流会。篠原先生が福女大でFD・SD講演を行われている間、学生たちだけで福岡食肉市場と吉塚アジアンマーケットへのフィールドワークへ。
私たちの英語の拙さから、国際学生に食肉市場=「食品が並んだ市場」に行くと勘違いさせていたようで、牛・豚の解体の様子の見学に驚かれ、英語や表現の力を磨く必要性を痛感。
フィールドワーク後は、大学でのディスカッション。各自が「自分を食べ物に例えるなら?」や専門分野について語るあっという間の2時間。英語でのコミュニケーションに苦戦したものの、APUの学生が意見を出す瞬発力から普段から社会問題と自分の関心をつなげて考えているのを感じた。何に対しても疑問を持ち、問いかける積極的なマインドにも刺激を受けた。

3連続企画で学んだ「組織の垣根を越えた協働」をローカルに落とし込んで考える場を、授業外企画として開催することに挑戦。ゲストは立教大学サービスラーニングセンター・副センター長であり、国内外で災害支援を行なわれている中沢聖史先生と、まちづくりや合意形成のファシリテーション専門家の稲葉久之さんのお二方。
前半は、中沢先生が活動されてきたハワイや能登での災害支援現場のお話を伺い、後半は、稲葉さんが日本障害者リハビリテーション協会と協働開発したカードゲームを用いて地域に根差した共生社会の実現を考えた。
カードゲームは参加者どうしがコミュニティのニーズやリソースについて交渉するもので、中沢先生のお話にもあった「支援者側の目線ではなく、当事者の目線」に立って考えることがいかに重要で難しいのかを体験した。マニュアルに従うのではなく、目の前の人や地域のニーズを見極めることの大切さと共に、個々人のニーズに目を向け過ぎても「地域」への支援が成り立たないというリアルさも疑似体験できた。
このイベントには、3連続企画・大橋さん回にも参加してくださった、福津市市民共働部地域コミュニティ課市民共働推進係/福津市未来共創センターキッカケラボの職員であり福女大OGでもある井上真智子さんや、福津市主催の場づくりファシリテーター実践塾「BA-School」で活動していた国際教養学科4年の松島海咲さんのつながりで、BA-School卒業生もお越しくださった。
(Part2に続く)