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活動報告2024.10.15

学生企画ゲストセッション「自分って何?日系ブラジル人デカセギ移民第一世代女性と考えよう」を開催しました!

2022年度に新設された、福女大創設100周年を記念したフラッグシップ副専攻「グローバルリーダー(GL)」プログラム。プログラムのプラットフォームとなるのが「グローバルリーダー(GL)演習」です。GL演習では、圧倒的な量の実践の機会(他者との協働プロセス)から生みだす自己や他者についての発見を梃子に、自分自身のありたい姿、自分が望む社会のありよう、そして「グローバルリーダーシップ」を探求しています。

2024年度のGL3期生によるゲストセッション企画報告を是非ご覧ください!

ゲストの宮ヶ迫さんとセッション参加者。留学先のマレーシアやファームステイ先のニュージーランド、バイト後に自宅からつないで参加の福女大生も!学外からは、久留米大学の神本秀爾先生や立教大学の中沢聖史先生も参加してくださいました。

GL履修生によるリポート&リフレクション

私たち第3期GL演習履修生5名の初企画であるゲストセッションを、7/17(水)に開催しました。異なる背景を持つ他者を知ることを通して自己理解を深めることを目的に、約1か月かけて準備しました。

ゲストは、宮ヶ迫ナンシー理沙さん。宮ヶ迫さんはブラジルで生まれ、9歳の時に来日。小中高時代は懸命に日本文化に同化しようとし、大学になってから自分のルーツを意識し始めたそうです。「純日本人」ではない人々が「自分の言葉で自分を語る」を軸にしたドキュメンタリー「Roots of Many Colors」制作、音楽イベント「Shake Forward」開催、ブラジル移民両親との会話が不自由なこども向け母語教室のボランティア活動のほか翻訳・通訳者、ライターとして幅広く活動されています。

宮ヶ迫さんによる「腹が立つこと」について聴き入る参加者。

宮ヶ迫さんのリオデジャネイロでの生い立ち、来日後の学校生活、大学卒業後のキャリアについてのお話を伺う中で、「腹が立つこと」と題された1枚のスライドがありました。外国籍の子どもの教育義務がない、人権の感覚が教育の場に欠如している、「多文化共生」がただのきれいなスローガンになってしまっている…「腹が立つこと」にリストされたひとつひとつを、実感を込めて語ってくださいました。

特に印象に残ったのは「もらえなかった卒業証書」のお話です。日本のブラジル人学校に通っていたブラジル国籍の子どもが、今後日本で暮らすことを考え中学3年生の11月に日本の中学校に転校したものの、出席日数が足りず卒業証書がもらえなかったというお話でした。その生徒が通っていた「ブラジル人学校」は、学校教育法においては日本の中学校と同じような「学校」として認められておらず、そこで学んでも日本の学校の出席日数にカウントされないとのことでした。そのお話から初めて、日本に住む外国籍の子どもには、日本人には「当たり前」のようにある教育義務がないことを知りました。

宮ヶ迫さんは「誰一人置き去りにしない社会をつくる一員でありたい」とメッセージを残してくださいました。その一員になろうとする宮ヶ迫さんが自分自身で考え、行動する姿から、「Roots of Many Colors」のチラシにもあった「私たちはここに生きている」という使命感や情熱が伝わってきました。

聴くだけではなく、聴いたことについてお互いに語り合う時間を設けたことで、理解が深まりました。
参加者それぞれが宮ヶ迫さんのお話からの1番の学びを書いてホワイトボードに貼りました。
当日実施したアンケートから、参加者がたくさん感じ、学んでくれたことが見てとれました。2つ紹介します。

「移民の人と言っても様々で、『かわいそう』などの一言で表せる人ではなく、日々苦楽を感じながら生きている人々であり、それは私とも同じであると考えるようになりました。」

「もっと視野を広げて日本を見てみようと思うように変わりました。今の日本は技能実習生を始め、多くの海外の人が来日し、暮らし始めています。そのような現状があるということは、実際に身近なところに様々なバックグラウンドを持った人がいるということです。多くの日本人が、実は身近に海外出身の人がいると気づいてないかもしれませんし、気づいていても外部の人のように接しているかもしれません。そのような現実から目をそらすのではなく、私は向き合っていき、日本人と他の国の人を含めた異なるバックグラウンドを持った人が暮らしやすいいコミュニティを作れるように、視野を広げて今の生活を見ていきたいと思いました。」
 
1列目左、大亀彩花(国教2年)。2列目左から、和栗百恵先生、梅木乃々佳(国教3年)、三宅佑奈(国教3年)、福田優月(環境3年)、上村明空(国教2年)。3列目右、豊貞佳奈子先生。
ここで、今年度のGL演習履修生を紹介します。豊貞佳奈子先生と和栗百恵先生にご指導をいただきながら、学年学科も様々な学生5名が日々奮闘しています。8月からアイスランド、9月からクロアチアにそれぞれ留学している2名と一緒に、全員同じ場所にいなくても、お互い工夫して連絡を取り合いながら頑張っています。
 

今回のセッションを企画する過程で、私たちGL演習履修生は多くのことを学びました。その学びを、履修生の一人である福田優月が次のようにまとめました。合わせてお読みいただけたらうれしいです。

「まだまだまだまだ自分」な3か月間(福田優月)

福田優月です。大牟田から通学してます!
企画する過程からの1つ目の学びは、目的意識を持って行動することの大切さです。企画書や学内に向けたメール、企画後の事後アンケートを作成したときに、今まで福女大で開催された企画で作成されたものを参考のために見せていただきました。その際、見せていただいたものが「正解」なのだと、そのまま前例を踏襲して企画書を作成していました。

しかし、本当に大事なことは、ただ前例を真似するのではなく、どうしてそのような企画書や文章にするのかなど、自分たちで目的を考えることです。行動の目的を自分たちで考えて行動することで、その一つ一つを自分ごとにすることができ、完璧なものができないとしても、自分たち色のものを作り上げていくことができるようになると思います。

また、目的をもって行動することは、最後やりきったときに「自分たちで考えたことをやり遂げたんだ」という達成感にもつながるのだと気づきました。この達成感が、「自分ならできる」という自己効力感になり、また次に「何か自分でやってみたい」という原動力になるのだなということが分かりました。
 

企業インターンシップの場で応用できた!

この学びが、ただ学んだだけでなく身についたと実感した出来事が夏休み中にありました。その出来事というのは、参加した企業インターンシップでのグループワーク活動です。グループワーク活動では、出された課題を解決する提案書と、その提案を発表する資料を作成しました。その際、なぜこの課題に対してこの提案をするのか、なぜ発表資料はこの作り方をするのかと、何度も目的を考えながらグループワークに取り組むことができました。

きっと今までの私だったら、発表資料は提示されていた作成例をそのまま真似て作成していただろうなと思い、GL演習で学んだことが身についたんだと素直にうれしくなりました。これからのGL演習の中でも、それ以外でも、「目的意識をもって行動する」ということを大事にしたいと思った経験でした。

心理的安全性をつくるために、本音のコミュニケーションをする(心理的安全性はつくり出すもの)

2つ目の学びは、本音のコミュニケーションをすることの大切さです。本音のコミュニケーションとは、GL演習履修生で決めた、我慢・遠慮をせず「思い切ってポジティブな感情以外も言ってみる」「『とりあえず言わなくていいか』で諦めない」コミュニケーションのことです。これは、GL演習の第2回講義で学んだ、エイミー・エドモンソン教授の「心理的安全性」の理論とつながっています。第2回の授業で、「恐れのない組織」としてネガティブなことも率直に話すなど、心理的安全性を取り入れていこうと話をしました。

しかし、それが今回上手くいきませんでした。企画を作る過程で、自分たちで決めた作業を、いつまでに終らせるか目標を立てていたのですが、その目標に対してぎりぎりで動いていたことがよくありました。その原因が、本音のコミュニケーション不足でした。

例えば、作業を進めていくときに、「みんな忙しいから」と遠慮して、「自分も忙しくてあまり作業ができない」と打ち明けることができないなどです。「自分も忙しいことを伝えたら作業が進まなくてみんなが困ってしまう」と打ち明けられないまま、結局作業も予定通りは進まず、目標ぎりぎりになっていました。メンバーみんな動けないなら動けないなりに「じゃあどうしようか」と話し合うことで、よりよい方向に転換することができるため、まずは遠慮・我慢せず、自分の状況をさらけ出すことが必要だと学びました。

さらに、自分たちで決めた期限が迫った時に「本当はもっとこうしたほうがいいと思うけど、早く仕上げなきゃだしとりあえず言わなくていいか」と、無自覚に諦めていたことも、自分たちをギリギリの状況に追い込んでいたのだと気がつきました。このことからも、気づいたことを気づいたときに言うことがチームのためにも、よい企画をつくるためにも大事なことだと身に沁みました。

心理的安全性をGL演習の座学で学び、それをチームに取り入れようと話してから、いまだにこれまでの習慣が抜けきれず、本音で話せないこともある私たちですが、2024年度後期の活動ではもっと本音のコミュニケーションができるチームになりたいと思います。

サッカーでボールをみんなで繋いでいくように

3つ目の学びは、入れ替わり立ち替わりで作業を進めていくことです。私たちは企画書を書くにも、メールを書くにも、何にしてもとにかく全部を全員で集まって一緒に進めようとしていました。しかし、全員で集まろうとするとなかなか日程が合わず作業が進まないことがよくありました。それを改善するために必要なことが、サッカーでボールをみんなで繋いでいくように、「入れ替わり立ち替わり」で動くことです。その際、全員がイニシアチブをとって、自分の役割に最後まで責任を持つということが必要です。

もちろん、企画の内容や、メールでどんなことを伝えるかというような核となることは、みんなで話し合って意見をまとめることが必要だと思います。しかし、まとめた意見を土台に作業する段階では、役割を振って進めていくほうが上手く、迅速に進めることができるということを学びました。そのときに、1人が役割をやりそびれた際に、チーム全体の動きが乱れたという経験から、自分の役割を最後まで責任もってやり遂げること、そして、個人ワークで終わらないように、作業の進捗がどうなっているかの報告を忘れないことも大事なことだと学びました。

この記事で挙げたことの他にも、私たちは失敗からたくさんのことを学びました。今回のセッションの企画プロセスで学んだことを糧として、2024年度後期の活動も、GL演習のキャッチコピーである「まだまだまだまだ自分!」の姿勢で頑張っていきます。

【福田優月(ふくだゆづき)】環境科学科3年。福岡県立伝習館高等学校卒。大学に入学して丸2年が経った今年の春、これまでの学生生活で能動的に動いてこなかった自分に焦りを感じ、グローバルリーダー演習を履修することに決めました。ここで初公開ですが、私の今年度のテーマは「今までの自分だったらやらなかったことをやってみる」。引き続き色んなことにアンテナを張って行動したいと思います。